歯科医院の開業支援をしていると、「成功する医院と失敗する医院の違いは何ですか?」という質問をよく受けます。実際に、開業後の立ち上がりのスピードには医院ごとに大きな差があります。
今回は、多くの開業支援を通して私が感じた、歯科医院開業の「成功の条件」についてお話したいと思います。
成功の条件①:開業エリア、物件立地
開業のスタートダッシュが切れるかどうかは、ほぼ立地で決まるとも言われています。いくら良い技術があっても、いくら最新の医療機器を揃えていても、いくら気持ちの良い接遇をしても、良い口コミが広がり始めるのは開業から3ヶ月~半年経過してからのことがほとんどです。そのため、スタートダッシュに限っていうと、良い立地を選ぶことが最も重要な成功の条件となります。
それでは、「良い立地」とは具体的にどのようなものをいうのでしょうか?
一般的には
・視認性が良い(交差点角、バス停前、マンション1階)
・人の集まる施設の近く(駅前、スーパー横)
・間口が広い
・説明のしやすい立地
などが良い立地とされています。
これらに加えて、歯科医院としての良い立地かどうかも考える必要があります。例えば、交差点角1階の一見良さそうな立地であっても、同じ診療圏内に多くのファン患者を抱える強力な歯科医院がすでにあった場合はどうでしょうか?よほど差別化ができなければ、思うようなスタートダッシュを切ることは難しいでしょう。
一方で、診療圏調査の結果、近隣に歯科医院が多く、1日当たりの見込患者数が5人しかいないような場所はどうでしょうか?
分析すると近隣の院長は高齢化していて後継者もいなさそう、新しいきれいな医院というだけで差別化ができそうだ、となると良い立地となる可能性が高まります。
立地の良し悪しは、非常に多くの要素が絡み合うため簡単には判断できませんが
・地域のニーズ
・人の行動パターン
・競合医院の状況
などを丁寧に調査することにより、立地選びの精度は格段に上がります。
成功の条件②:開業前の広報活動
よく「知られていなければ、その店は存在しないのと同じ」と言われます。つまり、新たに誕生する新しいクリニックを現地の見込患者にいかに知ってもらうかが成功を左右します。
認知を広げるための代表的な手段としては
1.内覧会
2.新聞折込やポスティング
3.ホームページやSNS
などが代表的です。開業時は積極的に医院をアピールする最初で最後の機会と考え、十分な予算をとって投資することが重要です。
認知を広げるという意味で、開業前から自治会長などに挨拶回りをしたり、近隣の飲食店や整骨院などを利用して名刺を配って回る、といった先生もいらっしゃいました。
成功の条件③:入念な準備
開業前の内覧会等の告知がせっかくうまくいっても、開業直後の院内のオペレーションがスムーズでないと、新患の取り逃しやキャンセルにつながり、思うように売上が伸びないことがあります。受付の対応、新患対応の流れ、待ち時間の短縮、など開業して間もないからと言い訳はできません。研修期間の間に、様々な想定をして、医院としての方針とスタッフの動き方を明確にし、チームを作り上げておく必要があります。
また、まれにホームページの作成も診察券の準備も、開業ギリギリになってしまう医院さんがあります。必要と考えていた準備ができていない状態では、当然、良いスタートは切れません。
成功の条件④:覚悟
開業準備にしても、開業後にしても、先生によって覚悟の度合いが異なるように感じます。
ある院長は、1人の新患も取り逃さないんだと、昼休みでも自分が電話番をしたり、日曜でもどうしてもという患者を受け入れたり、相当な覚悟で開業直後の期間を過ごされていました。
またある院長は、開業を決意された瞬間から開業ノートを作り、医院見学やセミナーや書籍から得られた情報、ご自身のアイデア、などをびっしりと書き込まれていました。
そしてまたある院長は、開業時には医院理念や院内マニュアル、独自の人事評価システムまでも完璧に作り上げられていました。
結局のところ、覚悟の違いが準備の違いに繋がり、それが開業後の売上の違いに繋がっているのだと感じます。
成功の定義は先生によって様々だとは思いますが、イメージ通りのスタートが切れるよう、開業成功のための4つの条件をぜひ意識してみてください。